誠─紅き華は罪人に祝福を与う─
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「あ!奏!」
「あづさ」
校門から出てきたあづさが奏の姿を見つけて駆け寄ってきた。
どうやら第五課によってかけられた忘却術は成功しているらしい。
さすがだ。
あづさが渡辺の・・・。
私の術が効かなかったわけか。
・・代々鬼から守られている家系、か。
「どうしたの?学校休んで」
「うん、ちょっとね?」
「心配したんだから。山崎君や隣のクラスの珠樹君達も来てないって言うし」
「心配かけてごめん。何でもないから」
そう言うと、ほっとしたようにあずさは笑った。
もう気は取り直したようで、奏の手をとって左右にブラブラと揺らし始めた。
「ねぇ、これから時間ある?」
「・・・・あづさ、しばらく外出は避けた方がいい」
「え?なんで?」
一転して真面目な顔つきになった奏にあづさは戸惑い気味に聞き返した。
まぁ、普通の反応だ。
いきなりそんな事を言われたのだから。
しかし、そんな悠長なことは言っていられない事態になったのは確かだ。
現に・・・・
「・・・あづさ、走るよ?」
「え?うわっ!」
奏はあづさの腕をとり、駆け出した。
突然のことに、あづさは何とか足を動かし、奏についていった。
というより、引っ張られていった。