素敵彼氏の裏の顔
周りはきっと、ただの酔っ払いだと思っているだろう。
実際、ただの酔っ払いに他ならないが。
先輩たちが視線を逸らし、遠くにいた楓までもが見て見ぬふりをした。
誰もこんなたちの悪い酔っ払いに関わりたくないのだろう。
せっかくの楽しい場がぶち壊しだから。
分かっている。
……分かっているのに、溢れ出す感情を止めることが出来なかった。
「美優」
名前を呼ばれ、肩を優しく抱かれた。
少しだけ、心が熱を取り戻すのを感じた。
思わず顔を上げると、すぐ上には隼斗のきれいな顔があって。
一気に酔いも醒め、息が止まるかと思った。
「ごめん、美優」
隼斗の心配そうな声が聞こえた。
「静かな所に行こう。
そこでゆっくり話聞くよ」