素敵彼氏の裏の顔
故郷の祭り
ただ、心臓がばくばくと音を立てていた。
それだけしか覚えていない。
その後逃げるように部屋を飛び出したら、玄関の前で隼人に会った。
隼人はいつもの爽やかスタイルに追加して、おしゃれな中折れ帽と黒縁めがねをかけていた。
まるで、芸能人の変装のようなそのスタイル。
だけど、それはそれで様になってかっこいい。
思わず固まってしまうあたしに、
「美優……」
少し悲しそうにあたしを呼ぶ隼人。
きっと、あたしの叫び声が聞こえてしまったのだろう。
気まずくて下を向くと、
「……可愛い」
あたしの頭を優しく撫でてくれる。
それだけで身体に血が上り、顔がぼうっと赤くなる。
そのまま隼人はぎゅっとあたしの手を握り、静かに呟いた。
「ありがとう」