哀しみの音色
「蓮を重ねた樹じゃない。
樹が……樹が好きっ……。
バカみたいに一生懸命で、
子どもっぽいのに急に大人になって……
あたしの言葉に一喜一憂しちゃうような、そんな樹が好き」
「……それって褒めてんの?」
「あたしなりに」
そう言って、莉桜は笑った。
子どものような悪戯な笑みで……。
「あーちくしょうっ!」
俺はそんな莉桜を、再び抱きしめた。
「可愛すぎてムカつく。
言っとくけど、俺のほうが絶対に好きだからな」
「何そ……っ」
抗議しようと顔をあげた莉桜の唇を、俺は自分の唇でふさいだ。