哀しみの音色
 
「……ッ…」


ピクンと莉桜の体が反応する。

俺は傷の先端から順に、唇でなぞっていった。


この傷は、莉桜が蓮さんに守られた証。
莉桜が今、俺の前にいてくれる勲章。


だから……


「莉桜……」


傷痕すべてに口づけをし終わると、莉桜の顔を見つめた。



「生きててくれて、ありがとうな」



これは、俺が今、心の底から思う気持ちだ。



「……っ…」


莉桜の瞳からは、また大粒の涙が溢れ出し、俺はその涙を唇でぬぐった。



ずっとずっと、こんな華奢な体で抱え込んできた過去。


今それが、涙となって流れ落ちた。

 
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