哀しみの音色
 
「莉桜ちゃん、少し休んだら?」


樹の手を握り締めたまま、顔を伏せていると、後ろから樹のお母さんが声をかけてきた。


「もう丸3日、樹につきっきりでしょ」
「……いえ…」


あれからもう3日経ったのか……。


あたしには、時間の感覚すらなくなっていた。


事故に遭った日、樹についていると、樹の両親が慌ただしく病室に入ってきた。

新幹線に急いで飛び乗ってきたんだろう。

地方に住んでいるのにかかわらず、ハンドバッグ一つの身なりだった。


初めて会う樹の家族。
温かみが伝わって、樹がこんなふうに育つのも分かった。


初めて会う他人のあたしに、おばさんたちはすぐに樹の彼女だと受け入れてくれ、いつも優しくしてくれた。


だけど、
こんな形で会いたくなかったな……。

 
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