哀しみの音色
 
慌てて病院に駆け付けたときには、樹は手術中。

何時間かかったのか分からない。

ただ握り締めていた手のひらは、血が止まりそうなほど真っ白になっていた。


そして手術中のランプが消え、先生が出てくる。

駆け寄って、すがりつくと……



(一命はとりとめましたが……
 まだ安心できない状況です)



あたしの心を、えぐる言葉だった。



血はとまり、心拍も一応は落ち着いているけど、頭を強く打っているため目を覚ますか分からないという。


あたしはただずっと、樹の手を握っていた。



大丈夫……。

だって……



樹は死なない、って言ってたから……。


 
< 146 / 164 >

この作品をシェア

pagetop