何度でもまたあなたに恋をする
「・・・あげるからね」

パッと伏せていた顔を上げた。周りをキョロキョロと見回す。夢か。すごく気味が悪かった。小太りでメガネの男があたしの頭を撫でて。

「おい、お前はいつになったら気がつくんだよ」

目の前には清水さんが当たり前のように座っていてなんだかとても泣きそうな気持ちになった。でもすごく安心する。まるで夢の中のあたしはこの人を求めていたんじゃないだろうかって思うくらい。

「こっちは必死で片付けてきたってのにお前は寝てんだもんな。でも、その割にはあんまりいい顔してねえな。どうした?嫌な夢でも見たのか?」

「おい、莉央?」と名前を呼ばれ、胸が熱くなった。なんであたしのことそんなにも分かってるの?それともあたしはそんなにあの夢を見て表情に表れてるの?初めて見た夢じゃなかった。何度か途切れ途切れだけれど覚えてる。でも、ここまで感触や声が鮮明なのは初めてだった。

「だ、大丈夫ですよ。ちょっと頭が働かなかっただけです。それよりずっと待ってたんです。クリームワッフル」

「はあ。お前なぁ、俺よりもクリームワッフルかよ。しゃーねーな。マスター、クリームワッフル、大盛りで」

「大盛りって、丼じゃないのに」

あたしはこれが夢だということにまだ気付くよしもなく、目の前の清水さんと大好きなクリームワッフルを食べられるという嬉しさでそれを打ち消そうとしていた。

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