何度でもまたあなたに恋をする
嘘、嘘だよね。あたしを好き?どうして?どうしてあたしを好きなの?半ばパニックで頭が真っ白なあたしをクスっと笑ってまだ腕の中に引き戻す。

「やっと捕まえたんだ。簡単に離すわけねえだろ。教えてやろうか?いつから、俺がお前を好きなのか。どんなところが好きなのか」

教えて、ほしい。聞きたい。いつ、何がきっかけ?どんなところが?あたしの知らないあたしを春馬は知ってる。あたしの知らないあたしを春馬は好きだと言ってくれている。

「でも、その前に仕事をしましょう。続きはまた夜にな」

えっ?確かに始業時間始まってるけど。こんな肩透かしを食らうなんて。そっと腕を離され「仕事、仕事」とあたしに背を向け、春馬は事務所に戻っていく。あたし、告白されたんだよね?しかも憧れの清水さんに。なのに、何?このあっさり感。確かに仕事は大切だけどその合間を縫ってのドキドキ感がオフィスラブの醍醐味では?

あたしはまだわかっていなかった。春馬が仕事に真剣な理由も一番大切なことを忘れているということも。ただこのときは何も気づかないまま置いてけぼりにされたことに少しの苛立ちだけを感じていた。
< 32 / 37 >

この作品をシェア

pagetop