恋人たちのパンドラ【完】
穏やかに過ごしていた悠里に兄の仁からの連絡がきたのは9月の半ばだった。

年内に結婚する兄がどうしても、奥さんを紹介したいとのことだった。

一泊の予定で飛行機のチケットも準備されていた。

四国の叔母のところに身を寄せ、しばらくたった時に仁には母親と同時に妊娠の報告をした。

結婚もしていない娘・妹の妊娠――普通ならば喜ばしいことではないだろう。

しかし、悠里はもともと子供が望めないと医師から言われていた。

それが愛する人との間に子供ができたのだ。

しかも仁は何よりも命の重さを知っている医師、母も看護師である。

悠里のおなかの子供の成長をともに見守ると約束し、叔母への挨拶もしてくれた。

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