恋人たちのパンドラ【完】
「悠里!」
その人物は後ろ手で扉を閉めると、狭い個室なのに一秒でも早く悠里のもとへたどり着こうと長い脚を大股でスライドさせ悠里を腕の中で強く抱きしめた。
その瞬間、悠里の中の記憶という記憶―――それまで無理矢理奥に閉じ込めて、ときどき顔をのぞかせるそれをどうにか押さえつけては甘い記憶と痛みに耐えて来た――が体中を駆け巡り、彼の身体が触れる部分のいたるところが悠里の体温を上昇させていくのを感じた。
「どうして――壮介、どうしてここに?」
そう問いかける悠里の言葉は無視して、悠里の柔らかい髪に顔をうずめて壮介は深く息を繰り返すだけだった。
抱きしめられた、強い腕のなか悠里はその壮介の指先がひどく震えていることが肌をとおして感じられた。
その人物は後ろ手で扉を閉めると、狭い個室なのに一秒でも早く悠里のもとへたどり着こうと長い脚を大股でスライドさせ悠里を腕の中で強く抱きしめた。
その瞬間、悠里の中の記憶という記憶―――それまで無理矢理奥に閉じ込めて、ときどき顔をのぞかせるそれをどうにか押さえつけては甘い記憶と痛みに耐えて来た――が体中を駆け巡り、彼の身体が触れる部分のいたるところが悠里の体温を上昇させていくのを感じた。
「どうして――壮介、どうしてここに?」
そう問いかける悠里の言葉は無視して、悠里の柔らかい髪に顔をうずめて壮介は深く息を繰り返すだけだった。
抱きしめられた、強い腕のなか悠里はその壮介の指先がひどく震えていることが肌をとおして感じられた。