恋人たちのパンドラ【完】
「壮介を引きっとった時は、彼女の面影をずっと探して苦しかった。弱い私はその苦しみから逃れるのに必死で本来しなければならないこと―――壮介を愛し守ることをしてあげられなかった」

テーブルの上で拳をギュッと握りしめ泰三は話を続けた。

「美津子からも壮介からも逃げ、ひたすら仕事に取り組んだ。その結果がこれだ。壮介には同じ思いをしてもらいたくない。それだけが父親らしくない俺から悠里さんにお願いしたいことだ」

「はい、わかりました」

悠里は泰三の目を見て頷いた。

「壮介、いいお嬢さんを見つけたな。幸せに。孫が生まれたら『おじいちゃん』と呼ばせること許してほしい」

そう告げて、席を立った。

「後は二人でゆっくりと、壮介仕事もしっかりな。綾川が最近忙しすぎて死にそうな顔してるぞ」

そう言って笑いながら部屋を後にした。
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