恋人たちのパンドラ【完】
「徳永 悠里 28歳。9年前に湊大学教育学部を中退。ドイツへと留学をする。

留学先のドイツで老舗おもちゃメーカーにて就職。開発した商品がセレブ御用達となり大ヒット。2年前に退職して帰国。

その後、国内中堅おもちゃメーカーの「YAMATO」に就職。商品開発を希望するも海外での華々しい経歴からか営業部に配属され今に至る」

悠里は大学を中退してドイツへと留学した。

父親の友人の家にホームステイしその友人が経営する玩具メーカーに就職していた。

壮介のことを忘れるための5年間のはずだった。それが実際には会った瞬間に甘くうずく気持ちと、当時の胸の痛みを瞬時に思い浮かべたのだから、この5年間は一体なんだったのだろう?

すらすらと、9年前別れた直後からの経歴を話す壮介に悠里は驚いて目を丸くする。

「どうしてって顔してるね。これくらい調べるくらいわけないよ。今の俺にはね」

そうやって机の上に差し出された名刺には

【三国百貨店 専務取締役  碓井壮介】

と記載があった。
< 32 / 233 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop