恋人たちのパンドラ【完】
自分の過去の過ちのために会社を巻き込みたくはない。

大学を中退した悠里は学歴でいえば高卒。本来ならば、入社の条件にも当てはまらないのを、実績を鑑みて雇ってもらった恩もある。

保母になる夢をあきらめた今、少しでも子供たちにつながっていたい。この仕事までなくなってしまったら・・・

「わかりました。おっしゃる通りにいたします」

できるだけ、他人行儀に返事した。

「理解したなら、携帯をここにだせ」

そういって、悠里のスマホを手に持ち、何やら登録を始めた。

「俺が呼び出したら、必ず来るように」

そういって、自分のスマホの番号の登録を終えると。

悠里の手の中にスマホを握らせた。

その瞬間、壮介は左手で悠里の髪をそっとその小さな耳にかけ

「契約完了――」

そう耳元でささやき、その熱っぽい唇で悠里の耳にくちづけた。
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