恋人たちのパンドラ【完】
***

壮介はバスルームに入ると頭を冷やそうと冷たいシャワーを頭から浴びた。

自分が今まで何をやってきたんだと後悔してもしたりない。


自分たち二人には何か大きな勘違いがあるのではと今さら気が付いた。

自分の間抜けさに嫌気がさす。

二人には圧倒的に言葉が足りなかった。

それは弱い自分のせいだ。

いつも何か良くないことがありそうだと、自分から先に逃げる。

相手から傷つけられそうだと、先に自分が傷つける。

そうやって自分だけを守って今まで生きてきた。

なによりも大切だと感じていた悠里よりも自分を優先して。

(サイテーだな)

だが今自分がすべきことはここで自分を嘲笑うことではなく、悠里ときちんと話をすることだ。

そう思い、シャワーのコックをひねりバスルームの外へでガウンを羽織った。

そして寝室の悠里の元に向かうが・・・・

そこにはすでに悠里の姿はなかった。

ただ、あの‘すずらん’の香りだけ残して・・・

(どこまでも俺からに逃げる気なのか・・・悠里・・・)

壮介は力なくその場にうずくまった。

< 97 / 233 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop