家族
 二人はブランコに揺られていた。
 しばらく春夫の胸の中で泣き続けた雪江は、少し落ち着くと、ポツリポツリと話し始めた。涙声だったので、ところどころ聞き取りにくかったが、春夫は一生懸命雪江の話を聞いた。
 雪江の話によると、十年付き合った彼氏に別れを告げられたというのだ。しかも、原因は相手の男の浮気であるという。今日、雪江は突然彼氏に呼び出されたという。大事な話があるということだった。
 雪江は、今年でもう三十になる。もちろん結婚の事も考えていた。十年も付き合っていながら、なかなかプロポーズしてくれない彼との事を、真剣に悩んだこともあった。けれど、それでも今まで待ち続けていたのは、やはり彼のことを愛していたからであり、彼との家庭を心から望んでいたからである。
 雪江はいつもよりもじっくりとメイクをして、洋服も一番のお気に入りを着て待ち合わせの場所へ向かった。待ち合わせの場所に着くと彼は珍しく先に来て待っていた。雪江は手を振り彼に駆け寄った。

< 26 / 37 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop