家族
 話を聞きながら、春夫はショックを受けていた。
 雪江に彼氏がいたのも、もちろんショックだったが、その男と結婚まで考えていたとは。いや、雪江の年齢を考えれば当然のことだったのだ。しかも、雪江は気立てもいい上に、道行く人が振り返るほどの美人である。周りの男がほっておくはずがない。
 なぜそんなことも考え切れなかったのかと、春夫は自分を呪う思いだった。
 雪江が立ち上がった。
「ごめんね、春夫君。こんな話しちゃって」
 雪江が明るい口調で言った。
 春夫は何も言えなかった。
「あ~あ、振られちゃったよ。だめだね、私。結婚考えてるのバレバレだったのかなぁ?・・・重い女だったのかな?」
 背中を向けたまま彼女が笑った。
「あははは・・・でも、じゃあ、どうしたら、どうしたらよかったのかなあ・・・」
 彼女の声は涙に消え入ってしまった。彼女は堪えきれなくなったようで、その場に立ったまま口に手を当て泣き始めた。
 気づいたら春夫はブランコから飛び降り、後ろから雪江を抱きしめていた。

   
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