かえるのおじさま
美也子が胸元のリボン飾りをしゅるりと解く。

(だめだ)

あれは、そんなエロ演出のために買ってやったものではない。
洋服屋で無邪気に喜んでいた笑顔が思い出される。

(だめだだめだ!)

あのときの美也子はあんなに光り輝くような表情だったのに、今はどうだ。明るく輝くのは照明のランプだけ。
肝心の主役は俯いて表情を隠し、震える指でボタンを外している。

(美也子だけは……ダメなんだ)

しゅるりと上半身が肌蹴られ、銀稜がさらけ出された。
観客たちは下卑た歓声を上げる。

隣の親父は立ち上がり、特に下品な声で「お~」と一声をあげた。

おそらく、満場の観客の中でもギャロだけだろう。
俯き隠された眼から落ちた雫に気づいた者は。

(あの……ばか!)

それを見てはもう堪るはずが無い。
ギャロは勢いよく立ち上がった。

隣の親父をガッツリと殴り倒し、そのまま一気に舞台に駆け寄る。
ブーイングが渦のように巻き起こる中、ギャロは舞台の上でもろ肌を脱いだ女を怒鳴りつけた。

「無理するなと、言っただろ!」
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