かえるのおじさま
その中心に座らされたギャロは、珍しく正装なぞしている。
もっとも、舞台衣装の中から掻き集めたジャケットで装っただけなのだが、内輪だけの『仮』祝言だと思えば上等すぎるほどだ。そして隣に並ぶ美也子は……

(綺麗だ)

座長が急ぎで裾あげしたドレスはピンク色。
ふんわりと広がったスカート部が、彼女の愛くるしい背丈を強調する。

そして上品に、少し深めに開いた背中はつるりとなだらかで、白かった。

「すまないな、美也子。形だけのことだから」

小声で聞かせた謝罪に、美也子は華のような笑顔で振り向く。

「こっちこそごめんね。彼女とか、できなくなっちゃうね」

「そんなもの、当面作る予定は無い」

美也子の顔がよりいっそうに輝いたようにも見えた。
だが、それはうぬぼれかもしれない。

それに乗っかるのはずるいことだ。
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