かえるのおじさま
「ねえ、ギャロ。もし、私が、元の世界に、戻れなかったら……」

どもりがちに呟かれた言葉を、ギャロの声が強くいさめた。

「絶対に戻れる。いや、戻してやる。だから、ンなしょぼくれた顔するな」

「違うの。しょぼくれてるんじゃなくて、ね」

「何が違うんだよ」

そんな二人の前に進み出たのは、猫頭の若い女だ。
彼女は酒の入ったマグを美也子に差し出す。

「おめでとう。とりあえず飲んでおきなさいよ」

自分も祝いの酒を受けようと手を出したギャロは、肉球のついた手でぺしっとはたかれた。

「あんたは控えておきなよ。この後があるんでしょ」

「なんだよ、この後って」

「やあねぇ、とぼけちゃってえー」

彼女の細い髭が、茶化すようにぴくぴくと揺れる。

「初夜だろ。私らは他の馬車に泊めてもらうからさ」

ギャロは、飛び出した目玉をせわしなく動かした。
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