あの日まではただの可愛い女《ひと》。
 揺るがない静かな声に桜は思わず葵の顔を見た。
 葵との始まりは、完全に酔っていてお互い気持ちも何もなくて言うなれば事故のようなものだった。ただ、この問いかけはまったく意味合いが違うことはわかった。桜に選択を完全に突きつけていた。
 すごく自然体なのに、目の奥だけが静かに何かを狙っている雄の顔。
 獲物を狙う肉食獣って、こういう感じなのかなぁと、胸の奥がソクリっと震えるのを感じた。反面、この獣になら喰われてもいい、ぼんやりとまだアルコールが効いている頭のすみでそう思う。

「――うん」

 桜は、そう吸い込まれるように答えていた。
 判断力に関しては低下しているのは織り込み済みだった。後悔はしないだろうが、明日絶対落ち込むのは自分でもわかっていた。それでも、今、桜は葵に抱かれたいとおもった。
 引き寄せられて、ぎゅっと抱きしめられて、安心感で桜は息をついた。

「俺に抱かれると安心する?」
「うん」

 葵はベッドに桜を連れ込んで、座らせ、パジャマをゆっくりと脱がせながらマッサージをするように手で愛撫を落としていった。葵自身は上半身のみサッと脱いでベッドの下に落した。

「ふっ…」

 キスはなかなか落されず、確かめるように手で全身を触る。丁寧にほぐしていくのだが、熱い指先が桜の敏感なところを探るようにくまなく動いた。

「俺の手、好きでしょう?」
「うん、好き」

 なんとなく葵の指先が震えた気がしたが、桜はゆるい快感に蕩かされ始めていて、その意味がわからなかった。決定的な快感を感じる部分はまったく触られずに、膜が張ったようなその感覚に桜の頭が恥ずかしさで、おかしくなりそうになったころに、葵が初めて唇にキスを落した。

「半開きの桜さんの唇、ぽてっとしてて、無防備で」

 唇を暴かれている合間に、葵がつぶやく。

「葵のは熱くて蕩けそう…」
「雫も甘いですよ」

 ちゅ、ちゅという音が頭の中に響く。甘い甘いキスに蹂躙されて、桜は葵の肩にすがりつくしかない。葵は桜の右手を肩からはずして、自分の左手に握りこんだ。ゆっくりとした動きなのに、息がだんだんと上がっていく。

「っん」

 息も絶え絶えになったころに、耳から首筋を舐められる。
 先ほども同じ箇所を舐められたはずなのだが、体の芯に振動が響いてくるような錯覚を感じた。その後ゆっくり鎖骨を舐められて、胸に吸いつかれる。胸先の尖りを微妙なくぼみまで確かめるように舐められつくした。

「う…ぁ」
「ふっ。桜さんのおっぱい尖ってきてますよ」

 ゆるくピンと葵は尖りをはじいた。

「ンくぅ」
「気持ちいい?」

 すでに快感が押し寄せ始めていて、ちゃんと目が開けられず、薄目で葵を見て、何とかコクコクと桜はうなずいた。

「でもまだまだこれからですからね」

 ツイテキテクダサイネ。
 そう若干意地悪く微笑んで、葵は胸から舌をつーっと臍のあたりまで走らせる。

「きゃぅっ!」
「桜さん、お腹弱いとこあるヨネ」
「ぅぅぅ。わざとお腹の上でしゃべらないでよ」

 葵が笑う息遣いさえ体の芯に震えを伝えてくる。
 何でこの人こんなにイジワルなの?と桜は涙目になりつつ、熱い吐息を何とか小刻みに逃がす。
 そんな様子を目を眇《すが》めて葵は確認して、いきなり膝で足を割って桜の秘所に口付けた。

「っぁ――」

 緩急で言えば、ずっと緩い愛撫で煽られていて、いきなり強い刺激を受けた。頭は反応できないのに体は勝手に反応して、自分の中からトロっとした蜜が出てきた感触に震える。
 残った左手でシーツを握って何とか上に逃げようとするも、葵の手にぎゅっとつかまれた右手が引き寄せられて、それを許してはくれない。ちゅるっという音とともに鞘をめくって尖り始めていた蕾を吸い込まれた。

「はっ…。そ、んな、いきなり…」
「すげー…甘い香」
「やっ…あおい、やめっんんん~~」

 葵の手をぎゅっと、爪が立つくらい握り締めたが、葵は桜を貪るのを容赦しない。
 蕾だけでなく、鞘、蜜口の辺りを舐めて蕩かそうとする。甘い痺れのようなものを感じ出して、勝手に腰が少しだけ踊る。

「んっんっんーーーっ」

 視界の端から白くなって桜はのけぞるしかなかった。
 かはっっと息を吐き出すと、すでに腕に力が入らない。
 視点が少し安定してくると、自分の足元に蹲るようにして膝立ちしている葵が目に入る。いつも笑っているような黒い瞳に光がなくて、じっと桜の秘所を見つめている。

「ん、あ…おい?」
「桜さんのココ、すごい赤くて、すごくいやらしく動いてマスヨ」
「…ウっ」

 指で秘所を形をたどるようになぞられて、蜜口もたどられる。

「…はふん」
「俺のも触ってくれる?」
 再び、快楽に流されだしていても、さすがに意味はわかった。コクコクとうなずくと、それまでずっと握っていた桜の右手にキスを落され、抱き起こされた。葵の体を足ではさむように三角座りをさせられ、そのまま右手は、いつの間にか緩められていた葵の股間に持ってこられる。

「あつっ」

 桜にとっては男のものを触るのは初めての経験だった。
 ものすごく熱くて滑らかで、ちょっと湿ってる。思っていたよりも柔らかい気がして、どこまで力を入れてもいいものかわからなかったので、少しやんわりと握り締める。

「んっ」
「桜さん、もっと力入れて平気だから」
「ぅ…うん」

 さすがに頬が熱くて葵の顔が見れなくて、目をつぶって肩口に頭を預けながら、葵のものをおずおずとしごいた。そんな桜の様子に笑って、葵は蜜口をいじっていた右手で桜の胸の尖りに蜜を塗りたくって、さらに愛撫を加える。

「あっ」

 蜜のぬるりとした感触にまた違う快感を覚えて、思わず目を開けると葵の顔が目に入る。

「目、つぶんないで。俺を見て」

 少し切なげな葵の視線に、なぜかさらに煽られる。葵の指が桜の蜜口に進入してかき混ぜ始めていた。中指で膣内(なか)を探られ、親指が蕾をゆする。
 気持ちよすぎて、喉が絞まる。なので声がかすれるような小さい声しか桜の中からは出てこなくなった。

「……っ」

 膣内(なか)の敏感な部分に葵の指がかすり、桜の体が跳ね上がる。何度かこすられ、指を増やされてさらに甚振られ、葵のものに添えた手はすでに力が入らず、単純に添えているだけに近くなっていた。

「んっんっ」
「桜さんの膣内(なか)、ものすごいうねり出しましたよ」
「ふ、ぁ。んん」
「啼き声も出始めましたね」
「っあ…」

 二本に増やされた指がくいっと曲がって敏感な箇所を引っかいた瞬間に、体に電気が走るような感覚を覚えて桜の体が弓なりに反った。

「あ、くっ」

 すごい浮遊感を感じて、その後、ぽすっと言う感触で、再び仰向けに寝かされたのに気がつく。目は開いているのに葵の姿がしっかり像を結ばない。
 ただ唇と唇が触れ合わんばかりのところに葵が近づいてきて、その吐息と声がさらに桜を煽った。

「俺の手、桜さんの蜜でぐっちゃぐちゃですよ」
「―んっ。い、わない…でぇ」
「音、聞こえますか?」

 まだ膣内(なか)は嵐のようにうねっているのに、さらに葵の指は桜をこする。
 ビクビクとまた痙攣し始めて、イキそうな予感が漂う。

「あっ、やだ。また…」
「イキそう?」
「それ、やだ。ぉねがぃい」

 涙が思わずにじみ出る。

「や、なんだ?」
「やぁ。一人はイヤ…」

 はっっという吐息がしたかと思うと、葵の指が桜の膣内(なか)から出て行く。何か破けるカサっというようなパリっというような音が一瞬した。

「ん。葵?」

 急にぽっかりと体の空洞を感じて、問いかけようとしたら、葵のものを蜜口に感じて、すぐにすごい質量で貫かれた。

「――ふ、くっ…ぁぁっ」

 ミチミチと音がするかと思うくらい、きつい桜の中に葵は自分の物を突っ込んでいく。
 ハッハッという短い吐息しか桜からは発せられないくらいの急激さで桜を葵は奪った。浅く深く、時折角度を変えて、柔らかな桜の膣内(なか)を葵は穿っていく。

「んんん。へ…変に、なっちゃ…っ」
「お、かしくなってくださいよ。もっと…」
「ふっ、ぅぅっ。やぁん。そ、ソコばっかり、こす…んないでェ」

 特に桜が反応する箇所を、集中的に攻めながら、俺をもっと飲み込んで?と苦しそうな表情で葵が吐息のように桜に伝えた。
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