ありがとう。






俺は気付いたら、無我夢中で持っていたボールを落とし、走っていた。





「すぐ保健室に運んでっ!!」



女子の体育の先生の声がする。





口が勝手に動いた。



「俺が運びます!!」




その後はよく覚えていない。




ただ、俺は、前に起こったある事件との既視感に襲われた。



自分の体育着に秋塚の頭から流れた血が染みていく瞬間だけが頭に残った。





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