可愛い生徒(カノジョ)の育て方
「ちなみに俺は教務部。時間割を作ったり、研修会の資料を作ったり、成績の一覧を作ったり、まあいろいろ」

 高校入試のシーズンは、死ぬほど忙しくなるのがこの分掌だ。

 万が一にもミスは許されない、入試業務は本当に神経を使う。

 そして安西は、色々大変なんだ~、などとつぶやきながらネタ帳に書き込んでいる。

「そういうこと。だから帰りは結構遅い。大抵9時は過ぎるな」

「とっても大変なんだね。知らなかったです」

 この大変さを理解してくれるなら、俺の縄張りもあまり荒らさずにおとなしく勉強して欲しいものだが……今の安西には無理、だろうな。

 まだまだ妄想したいお年頃のようだが、世間一般ではこの時期、妄想より受験勉強なんだぞ、と言いたいのをとりあえずぐっと我慢する。

 おそらく、本人が一番分かっているはずなのだから。

 ……いや、分かってないからこんな事を続けているのか!?

 あまりにも勉強しないようであれば、少し気合いを入れてやらねば。

「そんなに忙しかったら、きっと自分の時間もないんでしょう?」

 そう聞かれたので、思わず深く頷いた。
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