可愛い生徒(カノジョ)の育て方
 ついでに、言っておくか。これは取材対象にきっと聞きたい話、なんだろうから。

 正直なところ、田舎勤務時代には彼女を作るどころの話じゃなかった。

 暴れ放題の生徒相手に、毎日がバトル。

 おかげで、生徒からナメられないように、体と精神力がバッチリ鍛えられた。

 そのうえ彼女なんて……人間より牛のほうが多いようなド田舎で、どうやって探せばいい!?

「こんなんだから、彼女も作る暇がない訳だ。信用失墜行為に走る奴の気持ちもちょっとだけわかる気がするぞ」

 その瞬間、安西の顔がにやついた。

「あれれ、先生、そんなこと言っちゃっていいの~?」

 そういうところには、敏感に反応するんだな。

「ま、今のは冗談な。少しは参考になったか?」

「はい! ありがとうございます!」

「じゃあ、勉強も頑張れよ!」


 うきうきした様子で去っていく安西の後ろ姿を見て、おそらく勉強はしないだろうという予想はしていたのだが……。

 見事に当たってしまった。

 この直後に行われた模試で、政経の偏差値が42だったのだ。

 ……おい、日本史より下がってるぞ!

 もし、実際にいるのであれば、こいつにも執事兼家庭教師が必要だと思った。
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