磁石な君とマグネット

この女、どSです

『どS』



つまり方位磁針的に絶対、北。

磁石的には、N極。



「涼子!聞いて聞いてっ」



「(うるさい…)」



冷たいとか、



「……何。ボソ)耳元で話すな」



腹黒いとか、



「あのねーっ!“ゆー君”の話なんだけどぉーっ!」



そんな言葉が当てはまる人―――。


――まさに、あたし――



「はぁぁん??」



「いーじゃんっ、怒んなくったってぇ!僕の話聞いてよ~~」



「誰に言ってんの?つか、ヤダ」



「なんで!」



「……」



今現代、SやらMやらそんな話があるけど。
私はどっち?と言われれば決まっている。



「逆になんで?あんたに付き合ってると、疲れるんだけど。……失せろよ。うぜー」



黄崎 涼子(キサキリョウコ)、高校一年。
この架翠(カスイ)学園に入りたてだが、すでに二つの名があるらしい。



「馬鹿。-グサッ変態。-グサッ女装やろー。--グササッ」



「うぐっ!」



もうすでに、こんな発言をしても、周りからとやかくも言われない存在になっていた。
いいご身分である。

あたしはクラスメートの表情を横目で確認し、くるりと教室の出口へと踵を返す。



「かわい子ぶってんなよ。ターコ」



「ぎゃふんっ!」



いちいちリアクションを返す馬鹿もとい、鈴森 加奈(スズモリカナ)にぴしゃりと言葉を浴びせて教室を出る。
奴はおかしい。

あいつはれっきとした“男”だ。

その癖やたらと甘えたな声を出し、本当の女の子みたいな服装をしているかなりの変人。
決してオカマとかそっち系じゃなのだが……。



「あの変人に関わったら、ろくな事がない!」



あたしは、文句をぶつぶつ言いながら、さっき加奈が話そうとしていた内容を思い出す。



加奈が言う、“ゆー君”という奴。

実に気に入らない!


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