うしろの正面だーあれ vol.2

そのストレスからだろうか、父親は酷く荒れた。

酒が入ると暴力まで振るうようになった。


振り上げられた拳から身を守るように、反射的に腕を上げる癖がついた。

姑息な彼は、決まって人目が無いときに手を上げる。



「お前が馬鹿だからいけないんだ!!」

「どうして…!どうして妃鶴じゃないんだ…!!」



朦朧とする意識の中、ヒヅルという名を幾度も耳にする。

妃鶴。

もういない、姉の名──

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