水没ワンダーランド
めまいがする。

山本の背中が二重にも三重にも見える。


(ち…っくしょ、やっぱ病院……)


カチ、コチ、カチ、コチ



また、時計の音がする。


那智はあわてて自分の腕時計を見た。



「……っ!?」



針が、無い。


壊れているのではなく、まるで針が最初から存在しなかったかのように。


ただ、音だけが鳴る。


視界が白黒化してきた。


どうしよう、山本に助けを求めるべきか。


視線を上げる。
教室で見たときと同じ、白黒に支配された世界。


山本たちも、ビルも、喫茶店も、信号も、空も。



「……え……?」



自分の歩いている道のずっと前方。


モノクロの中に、赤色がちらりと見えた。


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