水没ワンダーランド
「返事がないと、とってもさみしいわ」


女は、サイレントブルーの瞳を歪ませて甘えた口調で言った。


「……は!?」


「なによ、失礼ね。那智は相変わらずなんだから…」


「相変わらずも何も…初対面だし……っていうか、なんで俺の名前!?」


那智が叫ぶ。

しかし女はよくできた人形のように機械的にほほえむ。


その仕草に、那智は息を飲んだ。


この世界の人間ではない、と直感したのだ。


雰囲気というのだろうか、とにかく形容はしがたいが、そう確信した。


とたんに、那智の背筋が凍りつく。



(…とにかく、逃げないと)



「…よくわかんないけど、俺、友達待たせてるから今日は引き取ってくれますか?」


那智がしどろもどろに言う。

女はカクン、と首をかしげた。

ほほえみこそ浮かべているが、感情のこもっていないそれは不気味さを増幅させる。



「待たせてる…って……一体誰を待たせているのかしら?」


「…だから、そこにいる……」


奇妙な女の声しか聞こえないせいで、無音の山本たちのことを忘れていた。

女に指摘されて初めて、那智は山本たちの方を振り返った。




「……え…」


那智は、唖然とした。


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