水没ワンダーランド
止まっている。
山本たちが、那智を心配して呼びかけようと口を開いたまま石像のように固まっている。
山本たちだけではない、池袋の街を行き交う人々すべてが
いつの間にか固まっている。
時間が、止まっているのだ。
山本は那智に手をさしのべようとしたまま、凍ったように動かない。
その目はぴくりともせず、ただ黒いよどみを瞳に閉じ込めている。
「なんだよ……なんだよこれ…」
すがるように女を見る。
しかし女は何も言わず、ただせせら笑うように那智を見ている。
しばらくたって、女がゆっくりと口を開いた。
「極めつけは、これよね」
女が指さす方向。
すぐ左手のショーウインドウに埋め込まれた小さな液晶テレビ。
テレビが、映っている。
ところどころノイズが混じるニュースキャスターの声が那智の耳に飛び込んできた。
那智はショーウインドウに歩みよる。
ショーウインドウを入れ替えするために中に入っている店員らしき人が不自然なポーズのままマネキンと化していた。
「ただいま入ってきましたニュースです」
テレビの中のニュースキャスターが慌ただしく言った。