あの日、言いたかったこと。

三人で並んで帰る。

空はもうオレンジになりかけていて、とても綺麗だった。


「二人とも、来週の日曜はどうするの?」


杏が突然そんなことを聞いてきた。

来週の日曜は……光輝の命日だ。


「どうするって……そんなん、決まってんだろ」


俺がそう言うと、杏は小さく頷いた。


「……そうだよね」

「杏は行かねぇの?」


悠斗が聞くと、杏は首を横に振った。


「行くよ。
でも、その日は親戚の結婚式があってちょっと遠くに行かなきゃいけなくて……。
だから、前日に行くつもり」

「そっか……」


てことは……

悠斗と二人……か。


俺の心を読んだのか、杏は俺の方を見てにこっと笑った。


「だから……来週は二人でちゃんと向き合ってきてね。
……もう逃げたりしちゃダメだからね」


少しだけ心配そうな杏。

悠斗はそんな杏の頭の上にポンッと軽く手を乗せた。


「……大丈夫。
今度こそは……絶対」


悠斗はそのまま俺へと視線を移した。

俺は悠斗の顔を見て黙ったまましっかりと頷く。

杏はそんな俺達を見て柔らかく微笑んだ。



……もうすぐ。

もうすぐやってくる……

……あの日が――

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