あの日、言いたかったこと。
忘れられぬ日

「日向ー!!
悠斗君来たわよ!!」


下から母さんの声が聞こえてきた。


今日は日曜日。

外は明るく、気持ちよさそうな青空が広がっている。


「日向!早くしなさい!」

「分かってるっつーの!」


そう返事をして、俺は自分の部屋を出て階段を下りる。

階段を下りると、ちょうどそこに母さんが興奮した様子で立っていた。


「……どうしたの?」

「悠斗君、久々に見たけどカッコよくなってるじゃない!
アンタ、あんなにイケメンなら早く言いなさいよ!
お母さん、こんな格好で出ちゃったわよ!」


あぁ……なるほど、そういうことか。


「イケメンだろうが何だろうが、中身は昔とそんなに変わってねぇよ」

「イケメンはイケメンでしょ!
あんなイケメンスマイルで“お久しぶりです“なんて言われてみなさい!
すぐ惚れちゃうわよ!」


惚れるのかよ……。


「昔は”おばさん、お腹空いたー!”なんて可愛く言ってたあの子が……。
何でウチの子は普通なのかしら」

「悪かったですね……普通で」

「ほらほら!こんなところで油売ってないの!
悠斗君、待ってるわよ!」


いやいや……引き留めてたのはそっちでしょ。
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