あの日、言いたかったこと。

……何か頭痛がしてきた。

ほとんど聞きもせずに終わった授業。

俺は何のために学校に来たんだ……。


痛む頭を押さえながら昇降口を出る。


これだから夏は嫌いなんだ。


でも……昔は好きだったな。

光輝がいなくなるまでは……。


「ヒナ君!!」


…………ん?


……聞き間違い……だよな。


アイツがここにいるわけない。

暑くて頭がおかしくなったかな、俺。


「ヒーナー君!!」


……いやいやいや、違う。

絶対に違う。


「もう、ヒナ君ってば!!」


俺の心の中の否定も虚しく、俺の右腕は後ろから誰かに掴まれた。

ゆっくり振り返ると……


「……何で」


笑顔の杏がいた。

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