あの日、言いたかったこと。

顔を見合わせたまま固まっている俺達を見て、杏が優しげな声で話しかけた。


「その方がいいよ。
ヒナ君とユウ君らしいし」

「俺達らしいって……」

「あー、よかった。
二人の掛け合いが見れて。
あ、ユウ君、お金」

「あ、あぁ……」


……俺達らしい、か。


俺は逃げていた。

悠斗といると、足りないものを思い出してしまうから。

光輝の存在を……追い求めてしまうから。


でも、それは悠斗も同じはずで。


俺達は同じ思いをした……いわば同士で。


今の俺の気持ちを一番理解してくれるのは悠斗で。


でも、そんな悠斗は……一歩踏み出そうとしている。

ちゃんと向き合おうとしている。


あの事件にも……俺にも。

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