あの日、言いたかったこと。

「ありがとうございましたー!!」


杏の元気な声を背中で聞きながら外に出た。

悠斗は早速ビニール袋から唐揚げ棒を取り出して食べ始めている。


「家帰ってから食えよ……」

「腹減って死にそうなんだよ」


と、唐揚げ棒を頬張りながら言う悠斗。

そんな姿もカッコイイからムカつく。


「ん……そういえば、杏のヤツ……もう吹っ切れたのかな」

「吹っ切れたって?」


俺が聞くと、悠斗は早くも食べ終わった唐揚げ棒の串を袋の中に入れて俺の方を見た。


「……光輝のことだよ」


光輝の…………あぁ……。


「杏……光輝のこと、好きだったんだっけ」

「だから……あの後、杏に近寄りがたくなったんだろうが。
……忘れたのかよ」


光輝がいなくなって……杏は酷く落ち込んでいて。

俺達はそんな杏にかける言葉が見つからなくて……


……結局、杏とは何も話さないまま離れ離れになってしまった。

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