社内恋愛のススメ
社会人になってからは、体調管理だけは気を付けていたんだけど。
上条さんがそう言ったから。
大好きなあの人が、私にそう言っていたから。
(とりあ………えず、着替え………なく………ちゃ………。)
朦朧とする意識を必死に繋ぎ止め、クローゼットの中を漁る。
上下がバラバラの下着と、着古したTシャツにジャージ。
この際、バラバラなのは仕方ない。
そんなことまで気にしている余裕がないのだ。
着ていたスーツを脱ぎ捨て、手当たり次第に服を身に付けて。
覚えているのは、そこまで。
ベッドに辿り着くことなく、私は床の上で意識を失ってしまっていた。
夢を見た。
幸せな夢だった。
「実和………。」
あの人が、私の名前を呼んでいる。
優しく、私の名前だけを呼んでくれる。
そんな夢。
渋い声が、心地良く耳に響く。
私、この声が好きだった。
大好きだった。
「上条さん!」