社内恋愛のススメ



(何か、他に言い訳はなかったの?)


病気じゃなくても、考えれば理由なんていくらでも作れるだろう。


家族が倒れたとか。

どうしても行かなければならない、急な打ち合わせが入ったとか。


やっぱり、コイツを『くん』付けで呼ぶ必要なんてない。

呼び捨てで十分だ。



鍵をかけることなく、床の上で倒れていた私。

そんな私を見つけた長友くんは、わざわざベッドまで運んだ。


ついでに、お粥まで作ったという訳だ。



(ありがとうって言うべきなんだろうけど、何だかなぁ………。)


下痢って、どうなの?

女として、その理由は大丈夫なの?


軽く睨む私をよそに、長友くんはわざとらしく肩を回しながら、こう告げた。



「あーあ、重かった。ほんと重かった!」

「………!」


失礼だ。

失礼極まりない男だ。


イラッとして、言い返す。



「う、うるさい!私、一応病人なんだけど。」

「は?だから??」

「もっと病人を労れ、長友!!」


喧嘩腰の私を気にする様子もなく、長友くんはヘラヘラ笑う。



分かってる。

分かってるよ。


長友くんは、親切心からそう言ってるだけだって。



口は悪いけど、長友くんはいいヤツ。

何年も隣で仕事をしてきたから、それくらいは分かっているつもり。

長友くんって、そういうヤツ。


私が気にしない様に、こういう言い方をするんだ。



長友くんの気遣いが、私の沈み込んだ心を優しく包んでくれる。

長友くんの笑顔が、私まで笑顔にしてくれる。


まだ熱っぽいけど、それほどつらくないのは何故だろう。


長友くんのお陰かな?

きっと、そうだね。



< 113 / 464 >

この作品をシェア

pagetop