社内恋愛のススメ
上条さんとの別れから、1ヶ月。
季節が移り変わっていく。
彼との恋が始まった春が去って、訪れたのは夏。
サンサンと降り注ぐ、真夏の強い陽射し。
紫外線は、万人に対して容赦ない。
それは、お肌の曲がり角をとっくに過ぎた私も例外ではなくて。
忙しさからケアに手を抜きがちの私にも、紫外線は突き刺さる。
けれども、救いなのは、私は会社の中に籠っていることが多いこと。
企画部の中でも事務的な仕事が多い私達女子社員は、外出する機会も少ない為に、真夏の強い紫外線に晒されることも減るのだ。
特に、出かけることもない。
休みだって、家に持ち帰って書類を仕上げる。
以前以上に仕事に没頭する私が、そこにいた。
カタカタ。
カタカタカタ。
キーボードを叩く音だけが、こだまする室内。
現在の時刻、午後5時半。
就業時間をとっくに過ぎた社内は、人の影もまばらだ。
昼間の喧騒が、嘘みたい。
そのくらい、静かなフロア。
そんな場所で、私は残ってまで仕事を片付けていた。
(うーん、終わらない………。)
仕事人間な私。
けれど、残業が好きだという訳じゃない。
残業が好きな人なんて、この世にいるのだろうか。
仕事が終わったら、遊びたい。
疲れているから、休みたい。
そうは思っても、仕事が終わらないのだ。