社内恋愛のススメ



長友くんの辞書に、遠慮という言葉は載っていないらしい。


そういえば、この前のお昼ご飯もおごらされたし。

多分、本気でおごらせる気だ。



「ちょっとは遠慮しようよ、長友くん!」

「遠慮?何、それ。」

「女の子にお金出させるって、恥ずかしくないの?」

「だって、せっかく有沢がおごってくれるって言うからさ!断るのも悪いかなって。」

「………断ってよ。」

「ゴチになりまーす。」



先ほどまで感じていた張り詰めていた空気も、今は何も感じない。


賑やかで。

騒がしくて。

だけど、楽しい。


それが、長友くんの隣。






未練がないって訳じゃない。

私だって、人間。


後ろ向きになることもある。

迷うこともある。

後悔することもある。



だけど、後ろを向いて、何になる?

振り返って、何になる?


振り返りたくない。

振り返っても、つらくなるだけ。


それが分かっているから、私はもう振り返らない。



後ろは見ない。


前を見る。

前だけを見る。



大好きだったあの人の隣には、今は別の人がいるんだ。

文香さんがいる。


上条さんの隣は、もう私のものじゃない。

私の居場所じゃない。



私は、私の道を。

自分が選んだ道を、自分の足で歩いていくって、そう決めたんだ。



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