社内恋愛のススメ



嘘じゃないよ。

私が好きなのは、上条さんだ。


そんなに簡単に、忘れたりしないはずだよ。

そんなに簡単に、別の人を好きになったりしないはずだよ。



だから、気のせい。


これは勘違い、なんだよ………。







カレンダーは、8月のページ。

夏が、あっという間に過ぎていく。


仕事が忙しいのは相変わらずだけど、何とかお盆休みだけは確保してもらえた。




久しぶりの帰省。

何ヶ月かぶりに、両親の顔を見て。



「実和、最近はどうなの?」

「最近はって、何が?」

「何が、じゃないわよ。いい人はいないのかって、そう聞いてるの。」

「………。」


帰ってきて、娘に聞くのがそれなんだ。


久しぶりに帰ってきたのに。

もっと労いの言葉とか、そういうのはないのだろうか。



いい人。


いたけれど、別れた。

別れなければいけなくて、別れたところだよ。


そんなこと、言える訳がない。



「あいにく、そんな人、いないし。」

「あーんたは、全く………早く結婚しなさいよ!」


そんなありがたいお小言も、頂いてしまった。



結婚。

その言葉は、以前よりも少しは身近に感じられる様になった気がする。


それは、自分がその言葉を実感出来る様な立場になったからじゃない。


きっと、長友くんの影響。



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