社内恋愛のススメ



上条さんとは、恋人だった。

一時期は教育係として、仕事を教えてもらってもいた。


でも、長友くんと上条さんを比べたら、長友くんと一緒にいた時間の方が圧倒的に長い。



「だーかーら、………もう有沢には近付かないでもらえますか?有沢とのこと、俺、知ってるんです。」


長友くんの言葉に、暗い響きが混じる。



他人と争うことを好まない長友くんが、上条さんに食ってかかってる。

上司である上条さんに、堂々とここまではっきり告げている。


長友くんは、本気だ。

本気で、上条さんに対して敵意を抱いているのだ。



敵意を剥き出しにして、隠そうともしない長友くん。


そんな長友くんに、上条さんは溜め息をつく。


はぁーっと、長く。

深く、深く。


鋭い視線は、そのままで。



「とにかく、このプロジェクトを君達だけに任せる訳にはいかない。」

「………!」

「僕も、監督する立場として、関わらせてもらう。いいな?」


上条さんが厳しい口調で、そう宣言する。



「構いません。どうぞ、ご自由に。」


長友くんも、不敵な笑みでそう返す。


間に挟まれた私は、何も言えないまま。







新しいプロジェクト。


その始まりは、私に新たな嵐の到来を予感させていた。



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