社内恋愛のススメ



「何か、いい案はないか?」

「うーん………。」


上条さんの言葉に、私は頭を抱える。



只今、プロジェクトの会議の真っ最中。


会議中のこの部屋にいるのは、私と上条さんだけではない。

このプロジェクトをメインで担当している、長友くん。

長友くんもまた、私と同じ様に悩んでいる。


ファイルと睨めっこしながら、長友くんは低い声で密かに唸っていた。



「クリスマス………クリスマス………」


長友くん、それじゃあ、念仏みたいだよ。

口が裂けても、真面目に会議をしている今は、そんなことは言えない。


長友くんがここまで悩むのも、珍しい。



いつだってどこからかアイデアを閃いて、スパッと決断しているイメージがあるのに。

そんな長友くんでも、今回だけはかなり悩んでいることは事実。


私だって、それは同じ。

リサーチ結果がプリントされたファイルに顔を埋め、思考回路をフル回転中だ。



(クリスマスかぁ………。)


行き詰まっていること。

それは、クリスマスシーズンに向けての新たな商品の開発。


老舗デパートのリニューアルオープンに向け、プロデュースを一手に引き受けた我が社。

既に、改装の方は着々と計画が進んでいる。



リニューアルオープンに花を添える、そんな目新しい商品。

店内を改装しただけなら、他の店と変わらない。


欲しい商品があるから、そこに行く。

行きたくなる様な、特別な商品を作り出すのだ。



私達が考えているのは、特にクリスマス用のプレゼントアイテム。


この時期、どこの店舗でも売り出されるプレゼント用の商品。

たくさんの商品が店先に並ぶけれど、中身は似た様な物ばかりだ。



差別化を図りたい。


しかし、目新しいだけではいけない。

やはり、売れる商品を作り出さなければ、意味がなくなる。


これが、簡単な様で難しい。



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