社内恋愛のススメ
「どれもこれも、ありきたりだな………。」
ホワイトボードの前に立つ上条さんが呟く一言は、とても重い。
確かに、その通り。
上条さんが言う通りだ。
ホワイトボードに書かれた案は、どこにでもある様な物ばかり。
指輪。
ぬいぐるみ。
クリスマスらしいスイーツ。
コフレ。
まるで、雑誌の特集でも見ている気分になる。
リサーチ結果は、多くの人の意見を吸い上げるもの。
たくさんの人の考えていることを、読み取るもの。
だけど、それは、従来通りのクリスマスプレゼント。
至って普通のプレゼントを望んでいる人が、それだけ多いのだ。
差別化を図りたい。
しかし、リサーチ結果は、その意思とは真逆のことを表してる。
差別化を図りたくても、この結果を見ると考え込んでしまう。
「長友くーん、ギブ………。」
ギブアップと、隣にいる長友くんに助けを求めてみれば、即答。
「ギブアップなんか出来る訳ないだろ、バーカ。」
「………そうですよね。」
ごもっともです。
分かっていながら、助けを求めた私もバカだけど。
しかし、こうも煮詰まってくると、助けを求めたくもなる。
「はぁ………。」
どうしよう。
あぁ、どうしよう。
何にも浮かばない。
自分の想像力のなさに落胆する。
溜め息をつく私と、そんな私の隣に座る長友くん。
「………。」
少し離れた位置にいる上条さんの視線が、容赦なく突き刺さる。
無言の圧力。
睨まれてる様な、そんな気さえしてしまう。
私はもう1度、心の中だけで深く溜め息をついた。