社内恋愛のススメ
『キス』



3ヶ月ぶりのキスは、突然で。


不意に訪れたキス。

それは、意外な人からもたらされたものだった。







顔が真っ赤になる前に、頭の方が先に真っ白になった。


目の前の長友くん。


閉じられた目。

睫毛。

柔らかい唇。



何も考えられなくなる。



動き続ける世界の中で、この場所だけが止まった様に見えた。


流れ続ける時間の中で、この時間だけが留まっている様に思えた。



真っ白になった頭の中を、長友くんの存在が埋めていく。


長友くんの顔。

長友くんの声。

長友くんの唇。



止められない。

止まらない。


長友くんのことだけで、私の頭の中がいっぱいになっていく。



どうしよう。

どうしよう。


だけど、分かってる。



本当は、分かっていたんだ。

気が付かないフリをしていただけで、心のどこかで気が付いていた。


気が付かないフリをしていただけ。

知らないフリをしていただけ。



認めたくなかった。


でも、もう逃げられない。

自分の気持ちから、逃げることは出来ない。





私、長友くんのことが好きだ。


同僚としてだけではなくて。

同期としてだけではなくて。


男として、異性として、長友くんのことが好きなんだ。



長友くんのことが、どうしようもなく気になる。



< 215 / 464 >

この作品をシェア

pagetop