社内恋愛のススメ



嬉しいけど、恥ずかしくもあって。

逃げたくもなるし、隠れたくもなる。


だけど、嫌じゃない。

嫌ではないけれど、どうにも照れ臭いのだ。



10月に入った、ある日。


今日もまた、1日が始まる。








(う………。)


いつも通り、朝早くにマンションを出て、電車に乗る。


電車に揺られた後は、会社へと向かって。

会社に足を踏み入れてから、30分。



私が配属されている、企画部のフロア前。

かれこれ20分近く、この場所に留まっている私。


ドアの前で、どうしても足が止まる。

なかなか、フロアの中に入っていけない。



中を覗き込んでは、またドアの前に戻る。


その動作を、ひたすら繰り返している。



「はぁ………。」


もういいかげん、中に入らなければならない。

始業時間は、すぐそこまで迫っている。


仕事をしなくちゃ。

仕事は待ってくれないのだから。



いつまでも、ここにいる訳にはいかない。

それなのに、私は探してる。


アイツを、あの男を探しているのだ。



(長友くん、まだ来てない………。)


いつもならば、いるはずの人間。

この時間には、さすがに遅刻魔の長友くんだって出勤している。


それなのに、今日に限って、長友くんの姿がないのだ。



長友くんがいない。


そのことが気になる。

どうしても、気になってしまう。



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