社内恋愛のススメ
今だけなのかな。
ううん、違う。
いつだって、そう。
あの日からだ。
砂浜でキスをしたあの日から、長友くんの存在を気にしなかった日はない。
1秒だって、消えてくれない。
いつも、私の頭の中にあり続ける。
あの日。
海の帰り道は、2人とも無言だった。
「………。」
「………。」
お互いに押し黙る、私と長友くん。
何を話したらいいのか。
どんな顔をすればいいのか。
照れが、恥ずかしさが口を重くしていく。
それからというものの、長友くんと上手く話せなくなった。
目を見て、きちんと話せなくなった。
もちろん、必要なことは話す。
業務上、どうしても話さなければならないこと。
プロジェクトのこと。
でも、それだけ。
何気ない会話は、私達の間から消えてしまったのだ。
会ったら会ったで、気まずい。
あの時感じた恥ずかしさが、蘇る。
そっと触れるだけのキス。
伝わる熱。
温もり。
長友くんとのキスが忘れられないから。
友達だと思ってた。
同僚だと思ってた。
だけど、それでも気になる人。
それが、長友くんだ。
いないと知れば、不安になる。
寂しいとも思う。
恋心というものは、矛盾してるらしい。