社内恋愛のススメ
『愛の言葉』



誰かを好きになるのって、こんなにつらいことだった?


人を想うことって、こんなに切ないことなの?



恋に破れて、もう恋なんていいやと思っていた。


しばらく、恋なんてしたくない。

恋に、人間関係に、ちょっとだけ疲れていたのかもしれない。



そんな私に、思いがけず訪れた恋。

まだまだ先の未来にあると思っていた恋。


その恋の相手は、とても身近な人だった。







恋って、したいと思ってするものじゃない。

恋をしたいと思っている時ほど、どんなに頑張っても、誰かに恋することはなくて。


無理をすれば、その分、恋は遠ざかっていく
だけ。



もう恋なんてしたくない。

逆にそう思っている時に、不意に誰かを好きになってしまったりする。



人間の感情ほど、操れないものはない。


思い通りに恋が出来たら、どんなに楽だろう。



恋は、自分からするものじゃない。

恋は、落ちてしまうもの。


そのことに気が付いたら、おしまい。


もう自分では、どうにもならない。








事件が起きたのは、午後。

それも、終業時間が迫った夕方のこと。


危機は、いつでも突然訪れる。



私は、どこかで恐れていた。


こんなことが起きるのを、心のどこかで予感していたのかもしれない。



「有沢さん、ちょっと………。」


そう呼ぶのは、上条さん。


企画部の主任。

私の直属の上司でもある、上条主任。



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