社内恋愛のススメ



(上条さん………。)


神様。

もしかして、神様って本当にいるのかな?


神様が、こんな風に私達を再び巡り会わせたのだろうか。



これって、運命かな?

私と上条さんを繋ぐものが、まだ2人の間にあるのかな?


極めて一方的に、運命を感じた瞬間だった。






上条さんのデスクは、部長のデスクの隣。

私とはかなり離れた位置にある、彼のデスク。


それも、仕方ない。

仕方がないことなんだ。



上条さんは、平社員じゃない。

役職もない、私みたいな存在じゃない。


海外勤務から帰って来た、上条さん。

本社に栄転という形で戻ってきた上条さんのポストは、主任。



企画部の主任。


あの頃とは違う。

私の教育係だった頃の上条さんじゃない。


同じ場所に立っている訳ではない。

私よりも、ずっとずっと高い所にいる人。




「………。」


仕事の最中。

スラスラとキーボードを打つ、私の手。


けれど、視線はパソコンのディスプレイには向けられていない。



私が見ているのは、別の場所。


同じフロアの端と端。

遠く離れた席に座る、あの人。



私が視線を送っても、上条さんがこっちを見てくれることはない。

私の方なんか、見てくれない。


気付いて。

気付いて下さい。



私の存在を思い出して。

仕事を教えた後輩のことなんか、もう忘れちゃったんですか?


あぁ、切ない。

物凄く、切ない。



気付いてすらもらえない。


そんな、ちっぽけな存在。

どうでもいい存在。



今更、どうにかしたいだなんて、思ってない。



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