社内恋愛のススメ
好きだなんて、言えなかった。
ずっとずっと好きでしたなんて、口が避けても言えなかった。
怖かった。
今の関係を壊すのが、怖かったから。
悩まなかった訳じゃない。
何度も何度も考えて、迷った。
気持ちを伝えるべきか。
それとも、伝えないままでいるべきか。
迷っている間に、行ってしまった。
大好きなあの人は、アメリカへと旅立ってしまった。
さよなら。
その一言さえ、言えなかった。
社会人になってから、初めての恋。
初めて恋をした時の様な、不器用な恋。
伝えることのないまま、散ってしまった想い。
伝えずに終わったからなのか、それからも長いこと、私は彼のことを引きずったままだった。
恋愛する気になんて、なれなかった。
次の恋に踏み出す勇気が、どうしてもなかった。
もう、恋なんてしたくない。
もう、恋なんていいや。
こんな悲しい思いをするなら、恋なんて当分いらない。
私には必要ない。
そうしているうちに、時間だけが流れて。
気が付けば、もう4年。
4年もの月日が流れてしまっていた。
この4年で変わったことと言えば、人並みに仕事が出来る様になったこと。
上条さんにみっちり仕込まれたお陰で、仕事を上手くこなせる様になったこと。
そして、女を捨てたこと。
恋愛なんて、いらない。
私は、干物女になってしまったのだ。
女っぽくなんて、私には必要ない。
仕事上、失礼のない程度に身だしなみを整えればいい。
過度に着飾る必要なんてない。
綺麗に着飾ったって、あの人はいない。
上条さんはいないのだ。
しかし、彼は帰って来た。
海外勤務を終えて、この場所に帰って来たのだ。
また同じ所で働ける。
同じ部署に配属されて、同じ部署で働くことが出来る。