社内恋愛のススメ



俺はどうしたって、有沢のことが好きなんだ。



忘れようともした。

他の女に目を向けようともした。


けれど、結局は有沢のことを思い出す。



いつだって、俺の心の中から有沢は消えてくれない。


好きだから、放っておけない。

傷付いている有沢のことを無視して、他の女の所になんて行けない。


行ける訳ないだろ。



あの男はずるい。

俺よりも、ずっとずっとずるい男だ。


婚約者がいるのに、上条さんは有沢のことも諦めきれない様子。



捨てたのは、あんただろ。

有沢よりも他の女を選んだのは、上条さんだろう。


そんなに惜しいなら、最初から有沢のことを選べば良かったんだ。

有沢のことだけを見ていれば良かったんだよ。



名残惜しそうに付き纏う上条さんに苦しむ有沢を、俺は見て見ぬフリなんて出来なかった。


だから、付け込んだ。

寂しい有沢の心に、心の隙間に忍び込んだんだ。


俺は。







「じゃあさ、恋人っぽいこと………してみる?」

「は?何、言って………。」


キスの理由?

そんなの、1つしかない。



好きな女とキスしたかった。

ずっとずっとキスしたかった。


それだけ。



俺だって、男だ。

好きな女とはキスしたいと思うし、抱きたいとも思ってる。


何度、頭の中で有沢にキスをしたことか。

脳内で、アイツを抱いたことか。



変態みたいに妄想してたんだ。


俺、バカだから。

煩悩ありまくり人間だから。



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