社内恋愛のススメ



「上条さんだよ。」

「………っ、………。」

「相手は、上条さん。奥さんにも会社にもバレちゃったから、支社に飛ばされちゃうんだよ………私。」


どこまで行っても、あの男が絡んでくる。

執拗に付いてきて、俺と有沢を引き離そうとする。



「長友くん、別れよう………。」


そんなの、納得出来るかよ。


やっと、有沢を手に入れたのに。

お前の隣に、堂々と立てる様になれたのに。



「もう、終わりにしよう?」


俺って、何なんだ。

有沢にとって、俺という存在は何だったのだろう。


そんなに簡単に別れを切り出せるほど、軽い存在だったのか。

切っても惜しくない、そんな存在だったのか。



なぁ、有沢。


答えてくれよ。



冷たい瞳。

笑わない顔。


2週間ぶりの有沢。



俺は、こんな有沢が見たかったんじゃない。

表情さえなくしてしまった、抜け殻の有沢を見たかったんじゃないんだ。


ただ、笑顔が見たかった。

彼女の笑顔が見たかっただけなんだ。



どうして。

どうして。


どうして、アイツなんだ。

あの男なんだ。




入社式から、ずっと一緒だった。

いつも隣にいた有沢が、俺の隣から消えてしまう。

いなくなってしまう。


俺の前から消えていく。



< 389 / 464 >

この作品をシェア

pagetop